渡りの鳥たちが食事場所へ移動するために早朝に一斉に飛び立つ「ねぐら立ち」を見に行った。
南の越冬地へ移動する途中のマガンは、北海道の沼や湖で休憩する。ここはそんな沼の一つ。
クワァクワァと鳴き続けるマガンの声はかなりうるさい。マガンたちは春と秋の2度、この沼に数週間滞留するから近所の農家さんたちは大変だ。
一時期、渡りの鳥たちはこの沼にやってこなくなったという。鳥たちがこの沼に再び立ち寄れるようになったのには農家さんの協力があると読んだ。沼に滞留した鳥たちが食事できるように、畑に落ち穂を残したりされているという。
朝5時すぎに沼のほとりに立ち鳥たちのねぐら立ちを待つ。鳴き声が止みザワザワザワという羽音がやがて轟となって空気を震わせる。ねぐら立ち。鳥たちが一斉に沼を飛び立つ音はまるで儀式のようだ。私たちは身体全体で響きをうけとめて生命を確認する。
そして6時すぎ。帰路を走りながら、朝霧けむる畑に降り立つ鳥たちを眺める。そのたびに農家さんの話を思い出す。