5月の釧路。赤と白のかわいらしい車体の花咲線ラッピングトレインが薄霧がかかる荒野を走っていました。
霧と荒野も魅力なのです
5月に入ってから霧が増えた。晴天続きだった冬を思い出しつつ、霧が釧路に戻ってきたなぁ、という感じ。
この日は朝の天気予報で濃霧注意報が出ていた。外で用事があるわけではないので気にしていなかったが、釧路らしさを楽しむために霧が出ている間に散歩に行くことにした。
私はひどく飽きっぽい性格で散歩コースを変えることで散歩が続くようにしている。そこでこの日は荒野に鉄路が見える場所を歩くことに決めた。霧の荒野を走る列車をいつか撮るための下見だ。念のため朝の時刻表を確認したが、ぎりぎり間に合わないような時間だったこともあり、列車は見られないものと思い出発した。
現地に着いたが散歩日和とはいいがたい薄暗い雰囲気。山あたりにうっすらと漂う霧は手前の荒野のほうへ広がっくるようにも見えた。鬱鬱した雰囲気だ。
しかし私はこの殺伐とした感じが好きだ。道東の特に海沿いの景色を見るようになって、自分がこういう地味で静かな雰囲気も好きだと知った。いつも独りで景色を見るから余計にそう思うのかもしれない。
車が結構なスピードで通り過ぎていくような通りだったが、歩道は広く歩きやすい。私以外には誰も歩いていないので心細さと気楽さを同時に感じながら歩いた。そしてときどき、獣道や孤立した木やを見つけてはひとり面白がって撮ったりした。
道東の木。やせ細ってシナシナだ。冬に凍れて水分が抜けるからかと想像する。間違って冷凍した糸こんにゃくを解凍したのに似てる気がする。そして脱力しながら踊っているようにも見える。
そんな余計なことを思いながら歩いていたら、ハッと動くものの気配があった。「列車だ」と直感し、無防備にぶら下げていたカメラを慌てて構え、そのままシャッターを切った。木々と木々の間を走る間になんとか3枚。
中途半端に薄い霧がかかる陰気くさい荒野を、1両編成の赤と白の愛らしい装いの列車がが走り去っていった。花咲線ラッピングトレイン。何度見てもかわいい。
今日は列車を見るつもりじゃなかった。でも見られた。得をした気分だ。思い切って歩きに出てよかった。
こういう予期しない出会いが程よくあると、散歩はさらに飽きずに続けられる。