暮らしの延長にある庭を楽しむ。自分たちの暮らしが心地よくなるために庭があり、そこで家族や友人たちと過ごす生き方は、やはり憧れますね。

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デンマーク流 楽しい週末の暮らし方@上野ファームを聞いて(後編)。

暮らしの延長にある庭を楽しむ。自分たちの暮らしが心地よくなるために庭があり、そこで家族や友人たちと過ごす生き方は、やはり憧れますね。

前回に続き2015年8月23日(日)に行われたイェンス・イェンセンさんによる「デンマーク流 楽しい週末の暮らし方」トークイベントのこと。前編ではイェンセンさんのご実家を例にデンマークの住まいについてのお話をまとめました。後編では庭についてのお話をまとめます。

北海道で暮らしてみたら「デンマーク流 楽しい週末の暮らし方@上野ファームを聞いて(前半)。

アウトドアリビング~庭は暮らしの延長に

日本でも家庭菜園は年々人気が高まっているように感じます。私も北海道に来てから両親の畑(家庭菜園の大きい版)を手伝い、自分もジャガイモやダイコンを育てるようになりました。

しかしイェンセンさんが伝え広めたい庭は「アウトドアリビング」。つまりリビングでの暮らしの延長として屋外がある、そんなイメージの庭だそうです(アウトドアリビングはイェンセンさんが命名)。

何かをする場としてのガーデン

デンマークの場合、敷地に占める住宅と庭の割合は、だいたい1:3~5で、庭のほうが圧倒的に広いそうです。マンションに住んでいる人は(あとでお話に出てくる)コロニーヘーヴと呼ばれる庭を借りることができるような仕組みがあるとか。

そのように庭を住まいの設計に組み込む理由は、庭が何かをする場として生活に根付いているからなのかもしれません。たとえば、短い夏に最大限日光に当たれるように、ダイニング以外にも3~5カ所の食事場を設けることが多いんだそうです。そして日が長い夏の夕食は平日でも屋外で食べる。

北海道(旭川だけ?)でも夏の夕食は外、というかガレージ前で食べる人を割とよく見かけるます。メニューはジンギスカン(要するに焼肉)なんですけれど、夏になると屋外で食事するというのは北海道とデンマークで似たところがあるのだなあと思いました。短い夏は太陽とより長くいられるように。まるで遠距離恋愛中の恋人たちのよう・・・。

という余談はさておき、デンマークの庭ではたき火も良くするそうです。食事のために火を起こすというよりもたき火をする、と。日本では火は危ないものだからと禁止されている場所が多いけれど、デンマークの考え方では、火を自分で起こすことは人間らしくて良いし、自給のスキルの一つとしてできていたいものなので、たき火は日々の暮らしでもとても身近なものなんだそうです。確かに私、火を起こすとなると火事が・・・と不安になります。

イェンセンさんのご実家の庭では地面に平らに円形のたき火用の場所が設けてありました。円の外側に2周に石をならべありました。薪は円の中心で燃やす。河原で鮎を焼くように棒に巻きつけたパン生地を焼くのだそうです。

これなら出来そうだなーと思っていたら、すでに夫と両親が畑の一角に作っていました。夫の両親はデンマークに負けないぐらい庭のある暮らしを楽しんでいそうです(笑。

で、もう一つ。国際バラとガーデニングショウのイェンセンさんの庭で使用されていたデンマーク(もしくは北欧)メーカーの焚き火用の台はシンプルなデザインでいいなあと思いました。

『コロニヘーヴ』 (イェンス・イェンセン)
引用元:国際バラとガーデニングショウ「第17回(2015年)の様子」『コロニヘーヴ』
(イェンス・イェンセン)

国際バラとガーデニングショウ「第17回(2015年)の様子」

デンマークの庭では家庭菜園ももちろん良く行われているそうです。ただ、食べ物を育てることが第一の目的ではなく、庭を楽しむことの一つのカタチが家庭菜園というぐらいの位置づけだそうです。最近は家庭菜園用に庭にボックスを作るやり方がはやっているそうです。しゃがまなくても土の手入れができて楽というのがその理由。

このボックスで野菜を育てるのはしゃがまなくてもいいなら楽だし家でもやってみたい。と、さっそく父にしたら「やってみる?秋ごろどう?土、運ばないとねー。」と話がすすみ、土を運ぶって何?といきなりハードル高い感も(笑。でも畑の端のスペースに廃材で枠組みをしてそこに家庭菜園に適した土を移してくるだけ!と言い聞かせて今秋か来秋あたりにやってみたいと思います。

コロニヘーヴ~庭を持てない人のための小屋つき庭

で、コロニヘーヴ。イェンセンさんはNPO日本コロニヘーヴ協会を設立し日本にコロニヘーヴを広めたいと思っている方なので、コロニヘーヴのお話です。

そもそもコロニヘーヴという言葉が初耳でした。直訳するとコロニー(集合)+ヘーヴ(庭)という感じで、賃貸用の庭がまとまって作られた場所のことを言うようです。デンマークでは100年の歴史があり、庭を持てない貧しい人たちが庭を持てるように土地を借りられるようにしたのが始まりだそうです。

そういう成り立ちもあり、賃料が400㎡の土地で年間3万円程度なんだそうです。あくまで庭を貸し出す契約だけれど、庭を楽しむために必要な小屋は建てても良いしそこに一定期間泊まることも認められているそうです。400㎡の土地だと50㎡ほどの小屋を置くのが一般的とか。

小屋を建てることも庭の楽しみの一つ。できた小屋を飾ったり、時がたてば壁を塗ったり修繕したりすることもまた楽しみの一つ。

そして庭は暮らしの延長で楽しむものなので、自宅から5km以内と近いことが大前提となるそうです。

日本でも小田原近くの江の浦というところにコロニヘーヴを作り始めているそうですよ。

お金の使い道の違い

最後に、イェンセンさんのお話で感じたお金の使い道のことを少し。

家は中古住宅が多く新築はもったいないのでは?とかリノベーションはできる限り家族でやったというお話だけでも日本の多数のお金の使い道とは少し違うなと思いました。あまり使わないなあと。

またデンマークでは外食はほとんどせず家で食事するのが基本。14歳になるまで外食したことがなかったと言っていました。友人と会う場合もカフェではなく自宅に招く、と。

家食が増えても調理の手間が増えない工夫があったり男性でも台所に立つ習慣があるなど日本とは違いも多いですが、家を自分の空間として作り上げ、他所のどこよりも居心地の良い場所で友人と会う。食事も自分たちで食べなれたものを食べる。そういう暮らしはお金を消耗しない暮らしだし、余計な移動時間や費用もかからない低コストな生き方だなあと思いました。

私が心地よく。できることを楽しくやっていく。

デンマークってそもそもどんな国なの?と思い調べてみたら、人口は北海道と同程度、国土は北海道の面積の約半分。税金がとても高く(医療費や学費の負担はゼロ、老後の暮らしも安いが・・・)自動車産業が無いので車が輸入品となり関税がとても高い、地方議員は無償で皆別の仕事を持っているから議会は夜行われるとか、投票率が90%などなど、デンマークが日本とあれこれ違うんだなあと知るきっかけにもなりました。

それでも一番こころに残ったのは、自宅での自分ならではの暮らしをとても大切に考え、そしてその暮らしの実現のために出来る範囲で何かを実践していること。自分が心地よいことを大切にする。できる範囲で生きる。そういうことが素敵だなあと思いました。